食品工場の労働災害とは?安全対策や起こりやすい労働災害を解説
食品メーカーの工場では、さまざまな要因から労働災害が発生しやすい傾向にあります。 労働災害は、従業員にとって大きな負担となるだけでなく、企業の生産性低下や社会的信用の失墜にもつながりかねません。
この記事では、食品工場で起こりやすい労働災害の事例やその原因、そして明日から実践できる具体的な安全対策について、分かりやすく解説していきます。


なぜ食品工場では労働災害が多いのか?主な3つの要因
食品工場では、他の製造業と比較しても労働災害の発生率が高いというデータがあります。 その背景には、食品工場ならではの特有の環境や、働く人々の状況、そして設備などが複雑に関係しています。
ここでは、労働災害が多い主な要因を3つの側面から見ていきましょう。
要因1:水や油で滑りやすい特有の職場環境
食品工場では、食材や機械の洗浄のために日常的に水が使われるため、床が濡れていることが少なくありません。 また、揚げ物などを調理する工程では油が床に飛散しやすく、水と油が混ざることでさらに滑りやすい状態になります。
こうした滑りやすい床は転倒事故の直接的な原因となり、打撲や骨折といった大きな怪我につながる危険性をはらんでいます。
特に、作業を急いでいる時や、床の清掃が不十分な場合に事故が起こりやすくなるでしょう。
要因2:従業員の多様化に伴う人的な要因
近年の人手不足を背景に、食品工場では高齢の従業員や、日本語でのコミュニケーションが十分でない外国人労働者が増えています。
経験が浅い従業員や、作業指示や安全に関する注意喚起が正確に伝わらない場合、機械の誤操作や危険な行動につながることがあります。
また、身体的な能力の変化により、若い頃と同じような感覚で作業を行うと、思わぬ事故につながる可能性も考えられます。 多様な従業員が共に安全に働くためには、誰にでも分かりやすい教育や配慮が求められます。
要因3:機械の老朽化や人手不足といった構造的な課題
長年使用されている古い機械は、現在の安全基準を満たす保護カバーや緊急停止装置が備わっていないことがあります。
また、厳しいコスト管理の中で、設備のメンテナンスが後回しにされてしまうケースも見受けられます。
さらに、慢性的な人手不足は、従業員一人当たりの作業負担を増やし、焦りや疲労からくるヒューマンエラーを誘発する一因となります。
こうした構造的な課題が、機械へのはさまれや巻き込まれといった重大な事故の背景にあるのです。
【事例別】食品工場で頻発する労働災害の典型パターン
食品工場で発生する労働災害には、いくつかの典型的なパターンが存在します。 どのような状況で事故が起きやすいのか、具体的な事例を知ることは、自社の職場に潜む危険を早期に発見し、効果的な対策を立てるための第一歩となります。
ここでは、特に発生頻度の高い労働災害のパターンをみていきましょう。
機械による「はさまれ・巻き込まれ」事故
食品工場では、ベルトコンベアやミキサー、包装機など、多くの機械が稼働しています。
これらの機械の回転部分や可動部分に、従業員の手や衣服の袖などが引き込まれる「はさまれ・巻き込まれ」事故は、後遺症が残るような重大な怪我につながりやすい災害の一つです。
特に、機械の清掃やメンテナンス中、またはトラブルで一時的に停止した機械を点検する際に、安全確認を怠ったまま機械を再稼働させてしまうことで発生するケースが多く見られます。
水や油が原因で発生する「転倒」事故
床が水や油で濡れて滑りやすいという食品工場特有の環境は、「転倒」事故の最大の原因です。 特に、床の清掃が追いついていなかったり、従業員が滑りにくい作業靴を履いていなかったりする場合に発生しやすくなります。
単なる転倒と軽視されがちですが、打ちどころが悪ければ骨折や頭部の強打など、長期の休業を余儀なくされる深刻な事態に至ることも少なくありません。 通路に物が置かれている場合などは、つまずきによる転倒のリスクも高まります。
高所作業や段差からの「墜落・転落」事故
大きなタンクの点検や清掃、原料の投入作業などで、はしごや脚立、作業台といった高所での作業が必要になることがあります。 その際、足を踏み外したりバランスを崩したりして下に落ちる「墜落・転落」事故が起こる可能性があります。
また、工場内には意外と多くの段差が存在し、少しの段差でもつまずいて転落することもあります。 ヘルメットの未着用や、安全帯を使用しないといった不安全な行動が、被害を大きくする要因となるでしょう。
熱湯や高温の調理器具による「火傷」事故
食品の加熱調理工程では、煮沸用の大きな釜や高温の油が入ったフライヤー、蒸気を発生させる装置などが使用されます。 これらの高温の液体や蒸気、熱せられた機械の表面に触れることで、深刻な火傷を負うことがあります。
調理中の熱湯や油がはねたり、高温の配管に誤って触れてしまったりするケースが典型的です。作業時の不注意だけでなく、設備の劣化による蒸気漏れなどが原因となることも考えられます。
包丁やスライサー使用時の「切れ・こすれ」事故
食肉や野菜のカット工程では、包丁やスライサーといった刃物を使用するため、「切れ・こすれ」による事故が後を絶ちません。 手作業で包丁を使っている際の操作ミスや、機械式のスライサーの清掃中に刃に触れてしまうといった事例が報告されています。
切れにくい包丁を無理に使おうとして力を入れすぎたり、切れ味の良いスライサーの危険性を軽視したりすることが、思わぬ怪我につながります。 耐切創手袋の不使用も事故の一因です。
洗浄剤や消毒液の取り扱いミスによる化学的な事故
工場の衛生管理に不可欠な洗浄剤や消毒液ですが、中には酸性やアルカリ性の強い化学物質も含まれています。 これらの薬剤を決められた濃度に希釈せず使用したり、保護メガネやゴム手袋を着用せずに取り扱ったりすると、皮膚に付着して化学やけど(薬傷)を負うことがあります。
また、異なる種類の薬剤を混ぜて有毒ガスが発生するケースや、薬剤の蒸気を吸い込んで気分が悪くなるなどの健康被害も起こり得ます。
冷凍庫や加熱エリアでの作業に伴う健康障害
冷凍食品を扱う工場では、マイナス数十度にもなる冷凍庫内での作業が必要です。 こうした低温環境で長時間作業を続けると、凍傷や血行障害を引き起こす可能性があります。
一方で、パンの焼成工程や加熱殺菌を行うエリアは、一年を通して高温多湿な環境になりがちです。
このような場所では、熱中症のリスクが非常に高まります。 適切な休憩や水分補給を怠ると、めまいや頭痛、けいれんといった症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。
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明日から実践できる!労働災害を未然に防ぐための8つの安全対策
労働災害を未然に防止するためには、場当たり的な対策ではなく、組織的かつ継続的な取り組みが不可欠です。
ここでは、比較的すぐに着手でき、かつ効果の高い安全対策を8つご紹介します。 自社の状況と照らし合わせながら、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
対策1:「5S活動」を習慣化し危険の芽を摘み取る
安全な職場環境の基礎となるのが、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の頭文字をとった「5S活動」です。
不要な物を処分し(整理)、必要な物を使いやすい場所に置く(整頓)ことで、通路が確保され、つまずきや転倒のリスクが減ります。 また、こまめな清掃は滑りの原因となる水や油を除去するだけでなく、機械の異常を早期に発見することにもつながります。
この5Sを全従業員で習慣化することが、危険の芽を摘み取る上で非常に重要です。
対策2:「KY活動(危険予知訓練)」で従業員の危険察知能力を高める
「KY活動(危険予知訓練)」とは、作業に潜む危険なポイントを事前に話し合い、対策を確認し合う活動のことです。 作業前やミーティングの短い時間を使って、「この作業にはどんな危険が潜んでいるか」「もし自分ならどうするか」を小グループで話し合うことで、従業員一人ひとりの危険に対する感受性を高めることができます。
これにより、マニュアルに書かれていないような状況でも、安全を最優先した行動がとれるようになるでしょう。
対策3:潜在的なリスクを洗い出す「リスクアセスメント」を定期的に実施する
「リスクアセスメント」は、職場にある危険性や有害性を特定し、それらによって生じる可能性のある労働災害の重大さと発生の可能性を評価し、リスクを低減するための対策を検討する一連の手法です。 機械や作業手順、使用する化学物質など、あらゆるものを対象にリスクを洗い出します。
これにより、まだ事故が起きていない「潜在的な危険」を見つけ出し、優先順位をつけて対策を講じることが可能になります。 定期的な見直しも大切です。
対策4:ヒューマンエラーを防ぐためのルールを明確化し共有する
「うっかり」「思い込み」といったヒューマンエラーによる事故を防ぐためには、誰が作業しても同じように安全に進められるルールの整備が欠かせません。 作業手順を写真やイラストで分かりやすくマニュアル化したり、危険な場所には注意喚起の表示をしたりする「見える化」が有効です。
特に、外国人労働者にも正確に情報が伝わるよう、ピクトグラム(絵文字)を活用するなどの工夫もよいでしょう。 ルールは作るだけでなく、なぜそれが必要なのかという理由も含めて全員で共有することが重要です。
対策5:設備の定期的なメンテナンス計画を立てて確実に実行する
機械の老朽化や不具合は、重大な事故の引き金となります。 安全装置が正常に作動するか、部品に摩耗や破損がないかなどを確認する定期的なメンテナンスは、労働災害を防止する上で極めて重要です。
年間のメンテナンス計画を策定し、担当者を決めて確実に実行していく体制を整えましょう。
点検結果は必ず記録に残し、異常が見つかった場合は速やかに修理や部品交換を行う必要があります。 計画的な設備更新も視野に入れるとよいでしょう。
対策6:全従業員を対象とした安全衛生教育を徹底する
労働災害を防止するには、従業員一人ひとりが安全に関する正しい知識を持ち、危険を回避する行動をとることが基本です。
そのためには、パートやアルバイトを含むすべての従業員を対象とした、継続的な安全衛生教育が不可欠です。 新入社員への雇い入れ時教育はもちろんのこと、機械の導入や作業内容の変更があった際にも、その都度教育を実施する必要があります。
事故事例やヒヤリハットの情報を共有し、危険への意識を常に高く保つことが大切です。
対策7:ユニフォームを正しく着用など身だしなみに気を付ける
ユニフォームの正しい着用も、労働災害防止の重要な要素です。
例えば、大きすぎるサイズのユニフォームは、機械の回転部に袖口や裾が巻き込まれる原因になります。 フードや紐がついているデザインも、引っかかる危険性があるため避けたほうがよいでしょう。
また、ボタンがしっかり留まっていなかったり、ポケットに物を入れすぎていたりすることも、思わぬ事故につながります。 自分の身体に合ったサイズのユニフォームを、会社の規定通りにきちんと着用することが自身の安全を守ります。

【関連記事】作業服の着用ルールとは?守るべき理由と項目別の注意点を解説
対策8:AIやIoTなどの最新技術を導入して作業の安全性を向上させる
近年では、AIやIoTといった最新技術を安全対策に活用する動きも進んでいます。
例えば、危険な作業をロボットに任せて自動化したり、機械に設置したセンサーで異常な振動や温度を検知して事故を未然に防いだりすることが可能です。 また、従業員が身につけるウェアラブルデバイスで心拍数などをモニタリングし、熱中症の兆候を早期に捉えるシステムもあります。
こうした技術の導入は、人手不足の解消と安全性の向上の両立に貢献するでしょう。
もし労働災害が発生してしまった場合の対応フロー
どれだけ万全な対策を講じていても、残念ながら労働災害の発生を100%防ぐことは難しいかもしれません。 万が一事故が起きてしまった際に、慌てず適切に対応できるかどうかは、被害の拡大防止や被災した従業員の将来にとって非常に重要です。
ここでは、労働災害発生後の基本的な対応フローを解説します。
ステップ1:被災した従業員の救護と二次災害の防止を最優先する
労働災害が発生したら、何よりもまず被災した従業員の命と安全を守る行動が最優先です。 意識や呼吸、出血の有無などを確認し、必要であれば救急車を要請するとともに、救急隊が到着するまで応急手当を行います。
同時に、周囲の従業員を安全な場所に避難させ、事故が発生した機械を停止させるなど、二次災害の発生を防ぐための措置を講じることが重要です。
現場の状況を安易に動かさず、 被災者の救護や二次災害防止を行ったうえで、可能な範囲で写真を撮るなどして記録しておくことも大切です。
ステップ2:労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出する
労働災害により従業員が死亡または休業した場合、事業者は「労働者死傷病報告」を所轄の労働基準監督署長に提出する義務があります。
この報告は、労働安全衛生法で定められた重要な手続きです。 従業員が4日以上休業する見込みの場合は、事故発生後、遅滞なく報告書を提出しなければなりません。
休業が4日未満の場合は、1月〜3月、4月〜6月といった四半期ごとに、その期間の発生分をまとめて報告します。 この報告を怠ると「労災隠し」とみなされる可能性があります。
ステップ3:労災保険の申請手続きを速やかに進める
被災した従業員が治療を受けたり、休業中の生活保障を受けたりするためには、労災保険の給付申請手続きが必要です。
この手続きは基本的に被災した従業員本人やその家族が行いますが、多くの場合、会社が手続きをサポートすることになります。 必要な書類の準備や記入方法の案内など、会社として誠意をもって協力する姿勢が求められます。
手続きがスムーズに進むよう、日頃から労災保険に関する知識を整理しておくとよいでしょう。
ステップ4:事故原因を徹底的に調査し具体的な再発防止策を策定する
事故の応急措置や各種手続きと並行して、なぜ事故が起きたのか、その原因を徹底的に調査することが極めて重要です。 現場の状況、作業手順、機械の不具合、従業員の教育状況など、多角的な視点から原因を分析します。
そして、調査結果に基づいて「どうすれば同じ事故を繰り返さないか」という具体的な再発防止策を策定し、全社で共有・実行に移します。
この取り組みこそが、企業の安全文化を醸成し、将来の労働災害を防ぐための最も重要なステップです。
【関連情報】厚生労働省「労働災害が発生したとき」
食品工場の労災に関するQ&A
ここでは、食品工場の労働災害に関して、Q&Aをまとめました。 いざという時に備え、基本的な知識を整理しておくためにお役立てください。
労災隠しが発覚した場合、どのような罰則がありますか?
労働者死傷病報告を故意に提出しなかったり、虚偽の内容で報告したりする「労災隠し」は犯罪です。 これが発覚した場合、労働安全衛生法に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
罰則だけでなく、企業の社会的信用を大きく損なうことにもなります。
パートやアルバイトの従業員も労災保険の対象になりますか?
はい、対象になります。
労災保険は、正社員やパート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、事業所で働くすべての労働者に適用される制度です。 労働者を一人でも雇用している事業主は、労災保険への加入が法律で義務付けられており、業務中の怪我などは補償されます。
安全対策の設備投資に活用できる補助金はありますか?
はい、活用できる補助金制度があります。
代表的なものに、厚生労働省の「エイジフレンドリー補助金」があり、これは高齢労働者のための安全衛生対策にかかる費用の一部を補助するものです。
制度の内容は年度によって変わるため、最新の情報を確認することをおすすめします。
労災防止のおすすめアイテムはありますか?
ユニフォーム・関連資材メーカーには様々なアイテムがあります。
軽量でフィット感の高い頭部保護具を食品工場用衛生帽子の中に身に着けることによって、頭部を保護することができます。 ヘルメット着用が義務付けられていないエリアでの転倒時などに、頭部への衝撃を和らげる効果が期待できます。
特に床が滑りやすい環境での作業には、こうした保護具の活用が有効でしょう。
まとめ
食品工場における労働災害は、滑りやすい床といった特有の環境や、従業員の多様化、設備の老朽化など、さまざまな要因が絡み合って発生します。
しかし、発生しやすい事故のパターンを理解し、5S活動やKY活動、リスクアセスメントといった基本的な安全対策を地道に継続することで、そのリスクを大幅に低減させることが可能です。
万が一の事態に備えた対応フローを整備するとともに、全従業員で安全意識を共有し、誰もが安心して働ける職場環境を構築することが求められます。

協力:株式会社ガードナー
株式会社ガードナーは、クリーンルームや清潔環境で使用されるユニフォームおよび関連資材を専門に取り扱うメーカーです。
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編集者:ユニフォームレンタル事業部
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