在庫切れ前に備える!職場の冷却服の選び方と準備タイミング

食品工場や工事・建築現場など、過酷な環境での作業は、高温多湿になりがちです。
特に夏場の現場では、従業員の熱中症リスクが高まり、作業効率の低下も懸念されます。
こうした課題を解決するため、近年、空調服や水冷服といった「冷却服」を従業員のユニフォームとして導入する企業が増加しています。
本記事では、空調服をはじめとする冷却服の種類や選び方、最適な導入時期について詳しく解説します。
現場の安全と生産性向上を両立させる、最適な暑さ対策を一緒に見つけていきましょう。
日本が暑くなるタイミングとは
近年、日本の夏は様変わりしています。
従来、5月頃から気温が上がり始め、猛暑のピークは7月から8月でしたが、現在は6月の早い時期から35℃を超える「猛暑日」が観測されるようになりました。

※データ出展:気象庁の過去の気象データ
こうした気候変動により、従業員の熱中症リスクは年々高まっています。
「真夏日(最高気温30℃以上)」や「猛暑日(最高気温35℃以上)」が常態化する中、本格的な暑さが来る前に、適切な熱中症対策を講じることが急務となっています。
職場の作業着や制服が熱中症など原因の1つに
多くの職場で着用される作業着や制服は、安全性や衛生管理を最優先にしているため、厚手の素材や、肌の露出を抑えたデザインが採用されています。
しかし、これらの特性が、かえって熱中症のリスクを高める原因となることがあります。
体から発生する熱や汗が服の中にこもりやすく、体温調節がうまくできなくなるためです。
特に屋外での作業が多い工事・建築現場や運送業では、直射日光を浴び続けることで体温が上昇しがちです。
こうした複数の要因が重なることで、従業員は気づかないうちに熱中症の危険に晒されているのです。
空調服・水冷服などの冷却服を暑くなってから準備しようと思っても遅い?
本格的な暑さが始まってから空調服や水冷服の導入を検討しても、夏のピークに導入が間に合わない可能性が高いです。
なぜなら、近年は6~7月頃には冷却服は品薄になり、在庫切れを起こす傾向があるためです。
空調服や水冷服などの冷却服の導入には、一般的に、以下のようなステップと期間を要します。
- 情報収集と製品選定:
従業員の作業環境やニーズに合った製品を選ぶための比較検討に数週間 - 見積もりと発注:
複数社からの見積もり取得、社内承認、発注手続きに数週間 - 納品までの期間:
在庫状況にもよりますが、発注から納品までに数週間~1ヶ月以上 - 試着と従業員への説明:
納品後、従業員への配布、使用方法の説明、意見収集に数日~数週間
本格的な暑さが始まる前に導入を完了させるには、前年の11月頃から検討し、予算を組んでいる企業もあります。
暑くなる前に早めに対策を検討しておくことで、いざ暑さ対策商品を導入しようと思ったときに、すでに手遅れになってしまう事態を防ぐことができます。
空調服・水冷服・ペルチェ冷却服の基礎知識
冷却服には、空調服や水冷服、ペルチェ冷却服などさまざまな種類があります。それぞれ冷却の仕組みや特徴が異なるため、作業環境や用途に応じて選ぶことが重要です。
ここでは代表的な冷却服の種類と、それぞれの仕組みと特徴について解説します。
空調服(ファン付き作業服)とは?
空調服は、小型ファンを内蔵した作業服で、ファンが服の中に外気を取り込み、汗を蒸発させることで涼しさを感じる仕組みです。この「気化熱」を利用した冷却方法は、人間の体温調節機能を積極的に活用するものです。軽量で動きやすく、多様なデザインがあるため、屋外作業全般や比較的風通しの良い環境で特に効果を発揮します。

水冷服(水冷式冷却ベスト)とは?
水冷服は、ベスト内部に張り巡らされたチューブに冷水を循環させ、体表面を直接冷やす冷却服です。バッテリー駆動のポンプで冷水を循環させるため、外気温や湿度に左右されにくい安定した冷却効果が特徴です。静音性に優れ、粉塵の舞う現場や火気を使用する場所、食品工場など、空調服が使いにくい環境で真価を発揮します。冷却効果は「涼しい」よりも「冷たい」と表現されるほど強力です。

ペルチェ冷却服(ペルチェ冷却ベスト)とは?
ペルチェ冷却服は、半導体素子であるペルチェ素子を利用して、電気の力で直接冷却プレートを冷やす仕組みの冷却服です。電源を入れると瞬時に冷却が始まり、首元や脇下など、太い血管が通る部位をピンポイントで冷やすことで、深部体温の低下を促します。氷や水が不要で、静音性にも優れているため、オフィスワークや運転作業、粉塵の多い現場など、場所を選ばずに使用できる点がメリットです。

空調服と水冷服とペルチェ冷却服の違いと使い分け
これら3つの冷却服は、それぞれ冷却方式や適した環境が異なります。
空調服
ファンで風を送り、汗の気化熱で冷却。
軽量で動きやすく、比較的安価。風通しの良い屋外作業や、湿度が高すぎない環境に適しています。
水冷服
冷水をチューブで循環させ、体を直接冷却。
冷却効果が非常に高く、高温多湿な環境や粉塵・火気のある現場、静音性が求められる場所で活躍します。
ペルチェ冷却服
ペルチェ素子で冷却プレートを直接冷やす。
即効性があり、コンパクトで静音。冷却範囲は限定的ですが、水や氷の交換が不要で手軽です。
これらの特徴を理解し、作業内容や環境に合わせて使い分けることが、効果的な暑さ対策の鍵となります。
例えば、炎天下での長時間作業には水冷服、風通しの良い屋外での軽作業には空調服、静かな屋内作業や短時間の移動にはペルチェ冷却服が適していると言えるでしょう。
食品工場・建築業現場に最適な選び方
作業環境に合わせた選定ポイント
屋外作業
直射日光や高温の影響が大きいため、冷却効果の持続性やUVカット機能が重要です。空調服は風量、水冷服は氷の持続時間がポイントになります。
屋内(食品工場・倉庫など)
空調が不十分な場所や、静音性が求められる環境では、ファン音が少ない水冷服やペルチェ冷却服が適しています。食品工場では、異物混入防止のためファンがない水冷服が推奨されます。
粉塵・水濡れ
粉塵が舞う現場や水を使う作業では、ファンが異物を吸い込むリスクのある空調服は不向きです。水冷服やペルチェ冷却服はこれらの環境でも安心して使用できます。特に水冷服は防水仕様の製品も多くあります。
火気の有無
溶接など火花が散る現場では、ファンが火の粉を吸い込むと危険なため、空調服は使用できません。水冷服やペルチェ冷却服が安全な選択肢となります。
空調服・水冷服などの冷却服のタイプ別の選び方
ベスト型
腕の動きを妨げず、最も涼しさを感じやすいタイプです。広範囲の作業や動きの多い現場に適しています。空調服、水冷服、ペルチェ冷却服のいずれにもベスト型があります。
長袖/半袖
長袖は直射日光や肌の露出を防ぎたい場合に、半袖はカジュアルなシーンや腕の動きを重視したい場合に選ばれます。空調服で長袖を選ぶ場合は、袖が作業の邪魔にならないか確認が必要です。
素材別
ポリエステル100%
軽量で撥水性があり、シワになりにくい。空調服では最も涼しさを感じやすいです。火気に弱いため、火を扱わない現場向きです。
綿100%
肌触りが良く吸汗性に優れ、火気に強いです。溶接など火花が散る現場では必須ですが、重くシワになりやすい傾向があります。
空調服はポリエステルが多いですが、綿は裂けたり破けたりしにくく丈夫なためハードワークに向いています。
混紡(綿・ポリエステル)
綿の着心地・肌ざわり、ポリの強度や耐久性を持ち合わせ、バランスが良いです。
バッテリー・ファン・冷却性能と耐久性
バッテリー
稼働時間、充電時間、容量(mAh)を確認しましょう。長時間作業には大容量バッテリーが必須です。予備バッテリーの準備もおすすめです。
多くのメーカーで、標準出力なら1日分(約8時間)の使用できるものが多いです。
ただし強風・高出力を多用すると稼働時間は短くなるため、普段は標準で、暑さのピークだけ強モードに切り替えるのがおすすめです。高出力を使う前提なら、高出力時の連続稼働時間も合わせて確認しておくと安心です。
ファン
空調服の場合、風量(L/s)が涼しさに直結します。40L/s以上が目安です。ファンの位置(腰、サイド、ハイバック)も重要で、座り仕事が多い場合はサイドファンやハイバックファンが適しています。
冷却性能
水冷服やペルチェ冷却服は、冷却プレートの数や面積、冷却温度(外気温との差)を確認しましょう。
耐久性
現場作業では引き裂き強度や防水性、防塵性も重要です。
コスト・メンテナンス・大量導入の注意点
コスト
初期費用は空調服が比較的安価で、水冷服やペルチェ冷却服は高価になる傾向があります。バッテリーやファンのセット価格、ランニングコスト(氷代、電気代)も考慮しましょう。
メンテナンス
空調服はファンとバッテリーを外せば洗濯機で洗えるものがほとんどですが、水冷服は手洗いが推奨され、水抜きやタンク洗浄の手間がかかります。ペルチェ冷却服は氷や水の交換が不要な分、手入れは比較的簡単です。
大量導入
企業での大量導入を検討する際は、在庫の安定供給、メーカー保証、アフターサポートの充実度も重要です。サンプル貸し出しサービスを利用して、従業員の意見を取り入れることも有効です。
冷却服のメリット・デメリット比較
空調服・水冷服・ペルチェ冷却服のメリット・デメリットを理解して選ぶことで、作業効率を落とさず快適に働くことができます。
ここでは、それぞれの特徴を整理し、導入前に押さえておきたいポイントを比較します。
空調服導入のメリット・デメリット
メリット
- 軽量で動きやすく、作業効率を阻害しにくい
- 汗の気化熱を利用するため、広範囲を涼しく感じられる
- 多様なデザインがあり、カジュアルなシーンでも着用しやすい
- バッテリーやファンの交換が比較的容易でメンテナンスがしやすい
- 比較的安価なモデルも多く、導入しやすい
デメリット
- 高温多湿な環境では、取り込む空気が熱風になり冷却効果が低下する
- 粉塵や火花が舞う現場ではファンが異物を吸い込む危険がある
- ファン音が大きく、静音性が求められる場所には不向き
- 服が風で膨らむため、見た目が野暮ったくなることがある
- リュックなどを背負うとファンが塞がり、効果が半減することがある
水冷服導入のメリット・デメリット
メリット
- 外気温や湿度に左右されず、安定した高い冷却効果が得られる
- 冷水が直接体に触れるため、「冷たい」という強い体感がある
- 静音性に優れ、場所を選ばずに使用できる(食品工場、接客業など)
- 粉塵や火花が舞う現場でも安全に使用できる
- フルハーネス対応モデルも多く、高所作業にも適している
デメリット
- 水や氷の準備と補充が必要で、メンテナンスに手間がかかる
- 氷が溶けると冷却効果が持続しないため、長時間の連続使用には氷の交換が不可欠
- バッテリーや水タンクを含めると、空調服よりもやや重くなる傾向がある
- 初期費用が空調服に比べて高価になる場合が多い
- 水漏れのリスクがあるため、使用前の点検が重要
ペルチェ冷却服導入のメリット・デメリット
メリット
- 氷や水が不要で、準備の手間が省ける
- スイッチを入れるだけで瞬時に冷却が始まるため即効性が高い
- 静音性が高く、オフィスワークや運転のような環境でも使いやすい
- コンパクトで軽量設計のものが多く、機動性を損なわない
- 粉塵や異物混入リスクがほぼなく、食品工場や清潔性が求められる環境でも導入しやすい
デメリット
- 冷却範囲が小さく、全身を冷やすことには不向き
- 室温が高すぎる環境だと冷却性能がやや低下する可能性がある
- 長時間の連続稼働には大容量バッテリーが必要になり、ランニングコストが増える
- 初期コストがほかの冷却服に比べ高額で、大量導入時のコストがネックとなることがある
より快適に使うための工夫・おすすめグッズ
冷却インナー・保冷ベストの活用
冷却服の冷却効果をさらに高めるには、インナーの選び方が重要です。
吸汗速乾性インナー
空調服と併用することで、汗を効率的に蒸発させ、気化熱効果を最大限に引き出します。
接触冷感インナー
水冷服と併用することで、冷たさを肌にダイレクトに伝え、ひんやり感をアップさせます。
保冷ベスト
空調服の下に保冷剤を入れるポケット付きのベストを着用することで、送風される空気を冷やし、体感温度を下げることができます。水冷服やペルチェベストと組み合わせることで、より強力な冷却効果が期待できます。
バッテリー・ファンの性能アップ術
大容量バッテリーの導入
長時間の作業には、15,000mAh以上の大容量バッテリーを選ぶと、最大風量での稼働時間を延ばせます。
高出力ファンの選択
空調服の場合、より強力な風量を実現する高出力ファンを選ぶことで、冷却効果が向上します。
予備バッテリーの準備
バッテリー切れによる冷却効果の停止を防ぐため、予備バッテリーを複数用意しておくと安心です。
快適性を高めるアクセサリー・周辺グッズ
ファンフィルター
粉塵の多い現場で空調服を使用する際に、ファンへの異物侵入を防ぎ、故障のリスクを軽減します。
通気スペーサー
ペルチェ冷却服の排熱を効果的に行い、冷却効果の低下を防ぐために役立ちます。
ヘルメット用空調ファン
ヘルメット内部の熱気を排出・冷却し、頭部の熱中症対策に貢献します。首元からヘルメット内に風を送る設計のヘルメットもあります。
チャージボトル・保冷剤
水冷服の冷却持続時間を延ばすために、凍らせたペットボトルや専用のチャージボトル、予備の保冷剤をクーラーボックスに入れて持ち運ぶと良いでしょう。
導入成功のポイント
導入成功のポイントまとめ
空調服、水冷服、ペルチェ冷却服の導入を成功させるには、以下のポイントが重要です。
- 作業環境の正確な把握:屋外/屋内、粉塵・火花の有無、湿度の高さなど、現場の具体的な条件を明確にする。
- 冷却メカニズムの理解:それぞれの冷却服の仕組みと特徴を理解し、環境に合ったものを選ぶ。
- 性能と耐久性の確認:バッテリー稼働時間、風量、冷却面積、素材の耐久性などを比較検討する。
- コストとメンテナンス性:初期費用だけでなく、ランニングコストや日々の手入れのしやすさも考慮する。
- 早期の検討と発注:新商品の発売時期や人気商品の品薄状況を考慮し、夏が来る前に準備を進める。
- 併用効果の活用:単体では難しい環境でも、複数の冷却服を組み合わせることで、より高い効果が期待できる。
冷却服の導入時によくあるお悩み
Q. 空調服と水冷服、どちらを選ぶべき?
A.それぞれに強みがあり、作業環境で選び方が変わります。
空調服は、ファンで風を送り込み、汗を気化させて涼しくします。軽量で汎用性が高い一方、ファン音が気になったり、衛生管理が必要な場所には向かない場合があります。
水冷服は、冷水を循環させて体を直接冷やすため、静かで衛生的です。ファンが不要なためクリーンルームでも使えますが、空調服より重くなる傾向があります。
Q. バッテリーの持続時間が心配です。良い方法はありますか?
A. 大容量バッテリーを選ぶことはもちろん、予備バッテリーを準備したり、昼休憩中に充電したりする工夫が有効です。また、水冷服の場合は凍らせたチャージボトルやペットボトルを複数用意し、溶けたら交換することで冷却時間を延ばせます。
また、高出力を使う前提なら、高出力時の連続稼働時間も確認しておくと安心です。
Q. 食品工場での使用に適した冷却服はありますか?
A. ファンによる異物混入のリスクがある空調服よりも、水冷服やペルチェ冷却服が推奨されます。特に静音性に優れ、衛生的で動きやすいベストタイプの水冷服が最適です。
まとめ
現場で働く従業員の皆様にとって、熱中症対策は健康と安全、そして生産性向上に直結する重要な課題です。
本格的な夏が到来してから慌てて検討するのではなく、前年の秋(11月頃)から予算組をおこなったり、従業員の作業環境やニーズに合わせた最適な冷却服を選定したり、導入準備を進めることが重要です。
適切な時期に、適切な対策を講じることで、従業員が安心して働ける職場環境を整備し、企業の持続的な成長を支えていきましょう。
最適な冷却服選びの参考として、各種製品の詳細もぜひご確認ください。
空調服:https://www.aitoz.co.jp/item/working/direct_cooling.php/
アイスベスト:https://www.aitoz.co.jp/item/working/ice_vest.php/